いつFIREできるのかシミュレーションしていますか？

こんにちは、Akiです。 

みなさんはいつFireできるか、どのようにシミュレーションされていますか？ いわゆる「4％ルール」を参考に計算されていますでしょうか？

4%ルールとは

ざっくりというと、下記のような資産取り崩しのルールとなります。

• 元はトリニティ大学の研究（Trinity Study, 1998）が根拠。
• 論文：Retirement Savings: Choosing a Withdrawal Rate That Is Sustainable
• 米国株式・債券の過去データ（1926〜1990年）を分析して、「毎年4%を引き出す」戦略が高確率で30年以上資産を維持できることを発見。
• 例えば資産1億円なら、最初の年に400万円を引き出す。翌年以降はインフレ率を加味して金額を調整。

ここから、年間支出の25倍あれば4％の取り崩しでFIREできるよね、ということで目安とされることが多い数字になっています。

4%ルールの前提と注意点

しかしながら、元となった研究には下記のような前提がありますので、万人に当てはまるか、また日本でのFIRE生活に当てはまるかは難しいところがあると思います。使うとしても、ある程度の目安にするような使い方が良いのではないでしょうか。

1. 対象期間:1926年から1995年までの70年間。
2. ポートフォリオ:株式を50～75%程度組み込んだポートフォリオ。
3. 成功の条件:30年以上資産が枯渇しないこと
4. 4％の定率（インフレ率を考慮しては調整はする前提）の取り崩しで生活ができること

1について、研究なので過去データを用いること自体は致し方ないのですが、やや古めの期間のデータとなっています。現在は2025年ですので、30年前までのデータとなっていますね。ただ、こちらについては米国市場の成長状況を鑑みると、現在でも通じる割合が高そうかなという印象です。

2については、株式のリスク・リターンの高さを前提に、それなりの割合で持っておくことが前提になっています。私はほぼ株式なので当てはまりますが、みなさんはいかがでしょうか？債権やコモディティなどのアセットクラスを多めに持っている方は、リスク・リターンが相対的に低くなります。つまり、アセットアロケーション私大ですので、当てはめる場合は調整が必要です。

3については、老後のリタイアであれば30年間のシミュレーションで十分かと思います。65歳でリタイアした場合は、95歳まで資産が枯渇しなければ、平均寿命を多めに超えていますのでだいたい大丈夫、となりそうです。一方でFIREの場合はより長い期間、資産が枯渇しないことを求められます。シミュレーション期間が長くなると、実際の生活上での”失敗”の可能性が高くなると思います。

4については、論文の結論からの逆説的な話になってしまいますが、実際に人生を送っていくうえで、支出が定額で済む・・訳はないですよね？もちろん、シミュレーションではインフレ率も考慮したうえで取り崩し率を調整する、という前提にはなっていますが、それ以外にも支出が変動する要素はあります。

例えば、各々のライフイベントのほうが影響が大きいのではないでしょうか？基本的に増えることはあっても、減ることはない要素のように思いますので、コレを加味しないと”FIREできる”かどうかの判断は難しいかな、と思います。仕事を辞めるということは、キャリア的には一旦リセットに近い状況になりますので、大きな決断をする上ではそのくらいの考慮はしたうえでないと決断できないかな、というのが私個人の感覚です。

ライフイベント、キャッシュフローのシミュレーション

さて、ライフイベントについて、どうやって加味してシミュレーションすればよいのでしょうか。私の場合、下記のようにやっています。

1. ライフイベントの洗い出し

年齢ごとに起こる（起こしたい）イベントと金額の概算をリストアップします。前提として、前に記事に書いたようなバケットリストを作成してから検討するのが良いかなと思います。

• 収入の増減、支出の増減、資産の増減を伴うような出来事が対象です。
• FIREできるかどうかは別にして、一旦は定年まで働く前提で記載。
• その後、途中から収入が無くなる/減少するパターンを別に加味することで、FIREタイミング応じたシミュレーションの土台を作成するイメージです。
• 例：
• 32歳：結婚（結婚式・披露宴、新婚旅行など300万円）
• 35歳：住宅購入（頭金1,000万円＋ローン開始）
• 38歳〜60歳：子ども教育費（年間100万円）
• 50歳：親の介護費用（年間100万円）
• 60歳：定年退職、退職金受取
• 65歳〜：年金受給開始（年間180万円）
• 75歳：車の買い替え（200万円）
• 85歳：介護費用増加（年間100万円追加）

自分一人で決められないこともあるかと思いますので、パートナーとも一緒に検討するのが良いと思います。

2. 初期条件の確認

シミュレーションのための初期条件として、開始時点の状況の確認や、今後の変化の見込みについて確認・検討します。

• 資産
• 金融資産
• 現金、株式、債券、不動産、etc...
• 負債
• （各種のローン、借入金、etc...）
• 収入
• 給与や年金、その他の定期的な収入
• 支出
• 生活費（固定費＋変動費）
• 資産運用関連の条件
• 年利回り（例：株式5%、債券2%）
• インフレ率（例：年2%）
• 住宅ローン変動金利（例：年0.25％上昇、最大4%）

3. 年次のキャッシュフロー表の作成

2で洗い出した条件を元にキャッシュフロー表を作成します。

FPの方などが一緒に作ってくれるサービスもあるようですが、私の場合はインターネットに公開されているテンプレートを元にGoogleスプレッドシートとして準備しました。項目をご紹介しますが、みなさんの状況によって項目自体を変えたほうが管理しやすいところはあると思いますので、あくまで作成のイメージを持っていただくためのご参考まで。

簡単な関数を追加する程度でベースの計算は可能です。（リスクを考慮したモンテカルロシミュレーションなどをする場合は、もう少し手の込んだことをしなければならないと思いますが、具体的なFIRE時期の目安を付けた後で良いでしょう。）

横軸

年（西暦）とします。何歳まで生きるか次第ですが、私は100歳程度になるまでの期間で追加しています。

私は2021年に初版を作成したので、そこからの記載になっていますね。

縦軸

横軸に対してデータを記載していく縦軸は、下記のように分類して追加しています。

※記載されている数字はあくまで説明用のイメージです。

• 基礎情報
• 経過年数
• キャッシュフロー表の初版からの期間。主に計算用。
• 家族の年齢
• 人数分を記載。ライフイベントとの整合性確認にも利用。
• 住宅ローン金利
• 各年の想定金利。主に計算用。
• 固定金利の方は一律でOKですが、最近は変動金利の方のほうが多いと思いますので住居費に反映しましょう。
• ライフイベント
• "1. ライフイベントの洗い出し"で検討したライフイベントを記載。
• 一時的な支出が増えるものは、できるだけ記載しましょう。

• 収入
• 夫の収入
• 妻の収入
• 投資残高からの取り崩し
• 収入合計（A）
• 投資残高からの取り崩しも含む

他にも収入がある方は、分離して記載してもよいと思います。

• 支出
• 基本生活費
• 住居関連費を除く、継続的にかかる生活費をこちらの分類にしています。
• インフレ率を掛け合わせ、毎年増加する計算とします。
• 住居関連費
• 住宅ローン、マンション管理費、固定資産税などをこちらの分類にしています。
• 住宅ローンを変動金利で借りているため、初期条件の通りに増加させています（私が利用している契約では、いわゆる5年がありません・・！）
• 車両費
• 教育費
• 保険料
• iDeCo掛け金
• その他の支出
• 一時的な支出
• ライフイベントに合わせてかかる費用はこちらに記載します。
• ライフイベントが複数ある場合は、合計金額にしています。
• 投資追加資金
• 資金の移動に近いですが、”資産”として移すタイミングで収入から減算することにしています。
• 支出合計（B）
• その他の支出項目の合計

支出の項目の分け方は、人によって大きく異なるかなと思います。合計の支出金額をシミュレーションしやすい単位で分離して書けばなんでもOKだと思いますので、よしなに調整してください。

• 資産
• 年間収支（Ａ-Ｂ）
• 収入の合計（A)から、支出の合計（B)を引いたもの。
• こちらを貯蓄残高に足し合わせます。
• 貯蓄残高
• 現金ベースの貯蓄の残高としています。
• 投資残高(iDeCo以外)
• iDeCo以外の金融資産の残高。
• 追加投資分＋想定している投資利回りで増加させます。株式と債券を別けて計算するのもありがと思います。（私はほぼ株式のみのため、一つにまとめてしまっています）
• ”収入”に記載した”投資残高からの取り崩し”は、こちらから減算しています。
• 投資残高(iDeCo)
• iDeCoの残高です。
• こちらからは基本的に取り崩しを行わないので、他の金融商品とは別にしています。
• 住宅ローン残高
• 負債ですが、私は1つしかないのでこちらに入れています。（複数ある方は別のカテゴリにしたほうが分かりやすいと思います。）
• 純金融資産
• 他の金融資産から負債（住宅ローン残高）を減算した残りを記載しています。

これらの資産がマイナスにならないように”収入”の投資からの取り崩しを調整しつつ、シミュレーションを行っています。投資残高や、純金資産をみると4％ルールと照らし合わせてどのあたりからFIREが現実的になってくるか見当がつくようになるはずです。

4. FIREタイミングを仮定してキャッシュフロー表のFIRE版を作成

では、実際にあるタイミングでFIREした場合に、その後の生活が破綻しないか確認するにはどうしたらいいでしょうか？

3で作成したものを複製したうえで、以下のような点を考慮して編集したバージョンを作成してみることをお勧めします。特に収入の減少や、支出の増加など、リスクが高まる方向の変化についてはしっかりと吟味いただいたほうが安全です。

一旦、よくある項目を列挙しますが、すべてを考慮するのは費用対効果が低いため、”金額的に影響が大きいな”というところに絞って反映するのが良いかなと思います。私も全部は考慮していませんが、家族構成などによって変わるところもあるため、各々で取捨選択するのがベターです。

収入の減少要因

• 給与収入
• ファットFIREであればゼロ化（基本給・賞与がなくなる）

• 厚生年金の受給額減少
• 退職時点までの加入期間と標準報酬額で計算されるため、加入年数が短くなると将来の年金額が減る
• 企業年金・確定給付型年金の減額
• 勤務年数が短くなることで受給額が減少
• 退職金減額
• 定年まで勤務しないため、支給額が減る場合が多い。
• 最近だと確定拠出年金を利用されているケースもあるので、iDeCo等へ移管して運用する前提の計算へ変更が必要。
• 通勤手当・社宅・食堂などの福利厚生消失
• 実質的な現物給与の消失

収入の増加または新規発生要因

ファットFIREの場合、こちらはあまりないと思いますが、サイドFIRE等の場合はいくつか要因があると思います。

• 副業・アルバイト収入
• 好きな仕事や短時間労働での収入
• 失業給付（雇用保険）
• 一定条件を満たせば受給可能（期間は短いため、長期の計画上は影響が少ないので無私でもOK）
• iDeCo受給
• 60歳以降で受給開始可能
• 年金繰上げ受給
• 65歳より前（60〜64歳）に受け取れるが、減額率あり。
• 投資を継続して行っている場合、繰り上げ受給してしまって投資資産からの取り崩しを減らしたほうが利回りが良かったり、自分以外へ渡せる余地あるため、検討の余地あり。

費用の増加要因

• 国民健康保険料
• 厚生年金加入時の標準報酬を基準に初年度は高額になることが多い
• 60歳まで自己負担（免除制度や任意加入制度もある）
• 家族が多い場合、扶養の仕組みが使えずに負担増となるケース有り（マイクロ法人のスキームは、こちらの対策ですね）
• 社会保険任意継続の保険料
• 最大2年間可能だが、全額自己負担となり高額化。
• 家族構成などの条件次第でメリット・デメリットあり。
• 介護保険料（65歳以降）
• 所得に応じて負担
• 第２号被保険者の場合は40歳から負担。
• 住民税
• 前年所得に基づくため退職翌年も一定額が発生
• 所得税
• 投資利益・副業収入によって発生。
• FIREの場合は、基本的に下がるとは思いますが念のため記載。
• 自費医療費
• 福利厚生でカバーされていた部分が自己負担に。

費用の減少要因

• 通勤費・外食費の減少
• 毎日の通勤・ランチ・飲み会費が減る
• 被服費
• スーツや制服の購入不要
• 税負担の軽減
• 所得減少による所得税・住民税の低下（ただし投資利益があれば影響あり）
• 引っ越しによる生活コスト削減
• 地方移住や家賃安い地域への移動

これらを加味して”あるタイミングでFIREしたらこうなる”というシミュレーション（キャッシュフロー表の別バージョン作成）を行い、貯蓄額がマイナスにならないかどうか、純金融資産が死ぬまでに枯渇ないかどうかをチェックすることでFIRE可能かどうか判定できると思います。

ちなみに私は2年後の試算をしてみましたが、まだ無理でした。やや悲観的な初期条件で行っている、というのも理由の一つですが、親の介護費用などの見積もりが難しかったりするのも要因でした。

まぁ、ぎりぎりを目指しすぎるよりも、もう少し安心感があったほうが良いですし、仕事もすぐに辞めたいほど嫌ではないのでもうしばらく頑張ります・・！

5. FIREまでの資産運用中は年次でキャッシュフロー表を更新

3で作成したキャッシュフロー表は、年次くらいで更新することをお勧めします。収入や支出の状況、投資結果、希望のライフイベントに変化がある可能性が高いためです。特に投資結果は自分のコントロールの範囲外だと思いますので、十中八九、差異が出ているはずです。

一定の期間ごとに見直すことで投資の効果を感じることができ、モチベーション維持にも良いと思いますし、収入・支出の見直しにも良いと思います。私も年次でシートの数値を見直して、実績分を反映しています。ここ数年は米国株の調子が良すぎるので、上方修正ばかりです！

ちなみに、FIRE後も経過観察のためにキャッシュフロー表は更新し続けたほうが良いと思います。資産枯渇についてむやみに心配するよりも定量的にシミュレーションしてみたほうが心には良いのではないでしょうか。

まとめ

FIREできるかどうか、定量的にシミュレーションする手段の1つとして、キャッシュフロー表の作り方をご紹介しました。プロのFPではなく、素人が独自にやっている内容のため改善の余地はあると思いますが、やり方のイメージは大きくずれていないと思いますので、みなさんの参考になりましたら幸いです。

みなさんのシミュレーション結果も知りたいので、よかったらコメントやXのほうで教えてください～